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宇野千代
ふらりと立ち寄った書店で江國香織のエッセイ『泣かない子供』と、宇野千代の『行動することが生きることである』を買う。

宇野千代の文章をこうして読むのはたぶん初めて。
この本に収録されているのは宇野千代が80歳を過ぎてから書いたもののようだけれど、すみずみまで生きるということに対する意欲が満ち溢れているようで、読んでいてなにやら元気が湧いてくる。
文体があちこちまばらなので、もしかしたらあちこちで書いたのをまとめたものなのかもしれない。

頭で考えるだけのことは、何もしないのと同じことである。私たちは頭で考えるのではなく、手で考えるのである。手を動かすことによって、考えるのである。

人間の考えることは、その人の行動によって引き出されることが多い。

おかしな言い方ですけれど、あの時は思わずそうした、考える隙間がなかった、と思うほど速い、速力のある行動ほど、「生きていた」と言う感覚が強いのです。悪かったかも知れない、しかし後悔はみじんもしない、と言う感覚です。


後悔はみじんもしない、などというくだりにはほれぼれしてしまう。

人生は死ぬまで現役である。老後の存在する隙はない。

人間と言うものは、次々と死んで行く。私もやがて死んで行くに違いないが、おかしいことに、私は自分がやがては死んで行く、と思ったことが一度もない。いつまでも生きているもののように思って、今日から明日、明日からあさってと暮らしている。

八十八歳にもなって、娘の頃と同じように、体の格好を気にするなんて、呆れたものであるが、しかし、そうとばかりは言えない。少しでも好い形になって、あの人に見られても好い、と思う、その、あの人がいるような気がするのが、面白いからである。八十八歳になっても、いや、百歳になっても、まだ、あの人がいるような気がするのが、私の生きている証拠なのかも知れない、と思うのが、面白いからである


私、年をとってもこういう人でありたい。
by bramble | 2007-09-09 18:18 | 読む
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